税制解説

マイニングマシン節税はなぜまだ使えるのか — 2度の税制改正の歴史

マイニングマシンを使った決算対策について調べると、「もう税制改正で規制された」という情報と、「今も有効な即時償却の手段だ」という情報が同時に出てきます。どちらかがデマなのではなく、どちらも部分的に正しいというのが実態です。この食い違いは、マイニング関連の節税が過去に2度、税制改正で狙い撃ちされてきた経緯を追うと解けます。

この記事は、マイニングマシン節税の現在地を正確に理解したい中小企業・マイクロ法人の経営者に向けて、令和4年度と令和5年度の2度の改正で何が封じられ、何が生き残ったのかを、改正の条文に沿って整理したものです。当社(株式会社87Technology)が実際に購入・運用したのは、この歴史をくぐり抜けて残った型ですが、その数字や運用の詳細は実録記事に譲り、ここでは制度の話に集中します。

前史 — 少額資産の「貸付け型」節税が広がっていた

2度の改正を理解する前に、その引き金になったスキームを押さえておく必要があります。マイニングに限らず、少額の資産を大量に買って即時に損金化する節税が、かつて広く出回っていました。

仕組みはこうです。取得価額が一定額未満の資産には、購入した期に取得価額の全額を損金にできる制度があります。代表的なのが以下の3つです。

この「少額なら即損金」という性質を、本業とは無関係な資産の大量購入に流用する動きが起きました。足場材、ドローン、LED照明といった単価の低い資産を大量に取得し、初年度に全額を損金として利益を圧縮する。そして買った資産は自社で使わず、他社へ貸し付けてわずかな賃料を得る。資産としての実態はほとんど貸付け業者への横流しに近く、目的は損金の即時計上そのものでした。

マイニングマシンも、1台あたりの単価を10万円未満に抑えれば、この少額資産のロジックに乗ります。ここが後の改正で論点になっていきます。

令和4年度改正 — 「貸付け型」の封鎖

こうした実態のない貸付けスキームに対し、まず令和4年度税制改正が入りました。

改正の内容は明快です。令和4年4月1日以後に取得する資産について、先に挙げた3つの制度すべてから、「貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供した資産」が除外されました(国税庁 No.5408)。10万円未満の少額減価償却資産、20万円未満の一括償却資産、30万円未満の中小企業者等の特例——即時ないし短期の損金算入が使える3制度が、まとめて対象になりました。

ポイントは「貸付けの用に供したもの」という限定です。買った資産を他人に貸すことで損金を作る使い方が、制度から締め出されました。足場・ドローン・LEDを大量取得して貸し付ける節税は、この改正で成立しなくなりました。

ここで重要なのが、括弧書きの「主要な事業として行われるものを除く」です。リース業のように、貸付けそのものを本業として営んでいる事業者の資産までは除外されません。製造業者が下請けへ機械を貸すようなケースも、事業活動の一環として従来どおり扱えます。つまりこの改正が狙ったのは、貸付けを本業としていないのに損金目的で貸付けに回す、実態の薄いスキームでした。

自社の事業で使うために保有する資産は、この改正の対象外です。ここが、後述する「生き残った形」の1つ目の根拠になります。

もう1つの型 — 経営強化税制を使った高額マシンの即時償却

令和4年度改正で貸付け型が封じられても、マイニング節税がすべて消えたわけではありませんでした。少額資産とは別の経路が残っていたためです。

それが中小企業経営強化税制です。これは中小企業者等が経営力向上計画の認定を受けた上で対象設備を取得すると、取得価額の全額を即時償却するか、取得価額の一定割合を税額控除できる制度です(国税庁 No.5434)。10万円という単価の縛りがないため、1台数百万円クラスの高性能マイニングマシンでも、計画認定さえ通れば初年度に全額を損金にできました。

少額資産型が「単価を10万円未満に抑えて台数で稼ぐ」型だとすれば、こちらは「高額マシンを計画認定で一気に償却する」型です。設備を第三者のデータセンターに預けて運用管理を丸ごと委託し、投資家は資金を出すだけ、という形態がここに乗りました。実質的には投資商品に近い建て付けです。この経路が、次の改正の標的になります。

令和5年度改正 — 「丸投げ委託型」の封鎖

令和5年度税制改正で、この経営強化税制にメスが入りました。

改正後、特定経営力向上設備等から、「コインランドリー業又は暗号資産マイニング業(主要な事業であるものを除く)の用に供する資産で、その管理のおおむね全部を他の者に委託するもの」が除外されました(国税庁 No.5434)。暗号資産マイニング業が名指しで条文に登場します。

この除外規定は、2つの条件の組み合わせで効きます。1つ目が「主要な事業であるものを除く」、つまりマイニングが本業でないこと。2つ目が「その管理のおおむね全部を他の者に委託するもの」、つまり運用を第三者に丸投げしていること。この両方に当てはまる設備が、経営強化税制の対象から外れました。

判定の目安は中小企業庁のQ&Aで示されており、事業の全体管理を含めて業務の全部を他者に委託する場合が「おおむね全部を委託」に該当します。逆に、事業主・役員・従業員が業務の全部または一部を実施している場合は該当しないと考えられる、とされています。

要するにこの改正は、本業でないマイニングを、運用も管理も丸ごと外部に預けて損金だけ受け取る——という投資商品的な使い方を封じたものです。高額マシン型のうち、この形態のものは成立しなくなりました。

生き残った形 — 10万円未満×自己の事業として運用する型

ここまでで、2度の改正が封じたものが見えてきます。令和4年度改正が封じたのは「実態のない貸付け」、令和5年度改正が封じたのは「丸投げ委託」。この2つに該当しない型は、現行制度でも残っています。

その1つが、1台あたり10万円未満のマシンを複数台、自己の事業として保有・運用する型です。当社が購入したWeb3 Maker型がこれに当たります。この型が2つの規制のどちらにも該当しない理由は、条文と照らすと整理できます。

同じ「マイニングマシンで即時に損金を作る」でも、貸付け型・丸投げ委託型・自己事業の少額資産型では、乗っている制度も改正の当たり方もまったく異なります。「マイニング節税は規制された」という情報は前者2つを指し、「今もできる」という情報は後者を指している。冒頭で触れた情報の食い違いの正体は、この3つが混同されて語られている点にあります。

なお、運用管理を委託する形をとる商品であっても、少額減価償却資産として損金算入する型は、経営強化税制の除外規定とは別の制度に立っています。委託の有無が直ちに損金算入の可否を決めるわけではない点は、少額資産型と経営強化税制型を分けて考える必要があります。実際の適用可否は個々の契約形態によるため、この点は顧問税理士への確認が要る論点です。

この歴史から読み取れること

2度の改正を並べると、規制の方向性には一貫性があります。狙われてきたのは、いずれも「資産としての事業実態が薄いのに、損金だけを即時に取り出す」使い方です。実態のない貸付け、運用の丸投げ委託——手を替え品を替え登場した実態希薄なスキームを、国税庁が段階的に狭めてきた歴史だと読めます。

この読み方を裏返すと、次の改正の見通しについても示唆が得られます。現在生き残っている自己事業・少額資産型が今後も安全だと保証されているわけではありません。当局が一貫して「実態の薄さ」を問題にしてきた以上、少額資産の即時損金という枠組み自体に、さらに条件が加わる可能性は残ります。実際、少額減価償却資産の特例そのものが、これまでも適用期限の延長と要件見直しを繰り返してきた制度です。

当社はこの領域を、改正リスクが常に伴う前提の対策として扱っています。だからこそ、この歴史を隠さずに書いています。当社が購入したマシンはすでにライセンス満期を迎えており、再購入を検討する立場でもあります。そのとき自社が誠実に判断するためにも、そして満期後の記録を読者に正直に共有するためにも、このメディアは「今は使える」という現状だけでなく「次の改正で終わり得る」というリスクの両方を書く方針をとっています。

まとめ

マイニングマシン節税をめぐる情報の混乱は、3つの異なる型が同じ名前で語られていることに起因します。改正の歴史で切り分けると、現在地がはっきりします。

この改正史を踏まえた上で、当社が実際にこの型のマシンをどう購入し、どう損金算入し、3年間でいくらの収益になったのかは、【実録】マイニングマシン節税 — 99万円分を3年運用しきった全記録にまとめています。また、生き残った型の土台である少額減価償却資産の制度そのものについては、少額減価償却資産の特例 完全ガイドで各金額基準の使い分けを整理しています。