決算対策の基本

決算対策商品の横比較 — 絵画・トランクルーム・コンテナ・マイニングは何が違うのか

利益が出た期に何かを買って損金を作る。決算対策商品と呼ばれるものは、この一点ではどれも同じです。ところが実際に見比べると、乗っている税制も、必要な金額帯も、買ったあとに何が返ってくるかも、抱えるリスクも、商品ごとに全く違います。同じ「決算対策」という言葉でくくられているせいで、この違いが見えにくくなっています。

この記事は、絵画・美術品、トランクルーム・コンテナ投資、足場レンタル、マイニングマシンといった代表的な決算対策商品を、制度・速度・金額帯・収益源・リスクの軸で客観的に並べたものです。当社(株式会社87Technology)が実際に購入して運用したのはマイニングマシンだけなので、それ以外は公開情報にもとづく制度面の比較として整理します。どれが優れているかではなく、それぞれ何がどう違うのかを、買う前の判断材料として置いていきます。

その前に、大半は「節税」ではなく「損金の前倒し」

商品ごとの違いに入る前に、共通する前提を1つ確認しておきます。決算対策商品の多くは、税金そのものを消しているわけではありません。今期の損金を大きくして税負担を将来へずらす、課税繰延や損金の前倒しにあたるものがほとんどです。

即時償却や一括損金といった商品は、本来なら数年かけて費用にするはずの資産を、買った期に一気に損金へ落とせる仕組みです。ただし早く損金にした分、翌期以降に計上できる減価償却費は減ります。さらに、その資産を売ったり収益を生んだりすれば、そこで益金が発生します。トータルで見れば、動いているのは税金を払うタイミングであって、税額そのものが恒久的に消えるわけではないケースが大半です。

この「節税なのか、支払いの先送りなのか」の区別は、決算対策商品を評価する土台になります。詳しくは別記事にまとめているので、あわせて読んでおくと以降の比較が理解しやすくなります(関連記事: 「節税」と「課税繰延」の違い — 決算対策商品に騙されないための基礎)。

絵画・美術品 — 100万円未満なら償却できるが、即時ではない

絵画や美術品も決算対策として紹介されることがあります。根拠になっているのは、平成27年度の取扱い変更です。それ以前は「1点20万円以上(絵画は号あたり2万円以上)」といった基準で減価償却できるかどうかを判定していましたが、平成27年1月1日以後に取得する美術品等については、取得価額が1点100万円未満のものは原則として減価償却資産、1点100万円以上のものは原則として非減価償却資産として扱うことになりました(美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ|国税庁)。

ここで注意したいのは、償却できる=すぐ損金にできる、ではない点です。100万円未満の絵画が減価償却資産に該当しても、器具及び備品(室内装飾品)として耐用年数にわたって少しずつ償却していく資産です。室内装飾品の耐用年数は、主として金属製のもので15年、その他のもので8年とされています。今期に取得価額の全額を落とせる即時償却型の商品とは、損金化の速度が根本的に違います。取得価額が10万円未満、あるいは30万円未満(中小企業者等の少額減価償却資産の特例)であれば一時の損金にもできますが、決算対策として語られる絵画は数十万円以上の価格帯が中心で、その場合は複数年かけての償却になります。

なお、1点100万円以上の作品は原則として非減価償却資産、つまり償却できません。価値が減らない資産とみなされるためで、この価格帯を「損金にできる」と説明されたら、前提を確認する必要があります。絵画は損金化のスピードよりも、資産として手元に残ること自体に意味を見出すかどうかで評価が分かれる商品です。

トランクルーム・コンテナ投資 — 即時償却を訴求するが、制度と分類に論点

トランクルームやコンテナへの投資は、中小企業経営強化税制による即時償却を前面に出して紹介されることが多い商品です。この税制は、経営力向上計画の認定を受けた中小企業者等が、対象となる設備を取得して指定事業に使った場合に、即時償却または取得価額の一定割合の税額控除を選べる制度です(No.5434 中小企業経営強化税制|国税庁)。器具及び備品なら1台30万円以上といった金額要件があり、事前に計画を認定してもらう手続きも必要です。

収益源は、預けた利用者から入る賃料です。運営会社が集客・管理を代行し、そこから手数料や土地の賃料を差し引いた額が投資家に入る形が一般的とされます。ここには空室リスクがつきまといます。利用が埋まらなければ賃料は入らず、それでも土地の賃料や管理費は発生します。

この商品で特に押さえておきたいのが、資産分類の論点です。コンテナについて、一部が「器具及び備品」ではなく、耐用年数が長く償却方法が定額法のみの「建物」に当たるとして更正処分を受けた事例が報じられています(コンテナ投資の節税策 更正処分事案が発生|税務研究会、2020年2月)。建物とみなされると耐用年数は大きく延び、短期間で償却するという当初の狙いが崩れます。建築確認の要否や倉庫業としての扱いといった論点も含め、「即時償却できる前提」がどこまで確実なのかは、契約前に個別の設置形態で確認しておくべき部分です。

足場レンタル — 令和4年度改正で終わった、過去の定番

かつて即時償却型の決算対策として定番だったのが、足場材料のレンタルスキームです。1本あたり10万円未満の足場材を大量に購入すると、少額減価償却資産として買った期に全額を損金にでき、その後はレンタル収入で投下資金を回収していく、という仕組みでした。ドローンやLED照明でも同種のスキームが組まれていました。

これは令和4年度税制改正で実質的に終わっています。改正により、令和4年4月1日以後に取得して「貸付けの用に供したもの」は、少額減価償却資産(10万円未満)・一括償却資産(20万円未満)・中小企業者等の少額減価償却資産の特例(30万円未満)のいずれについても、これらの損金算入制度の対象から除外されました。ただし、その貸付けがその会社の主要な事業として行われる場合は除かれます。この改正の経緯は別記事で詳しく追っています(関連記事: マイニングマシン節税はなぜまだ使えるのか — 2度の税制改正の歴史)。

改正の背景として、利益が出そうな期に単価10万円未満の資産を大量に買って全額損金にし、後の年度でレンタル料と売却で回収する課税繰延スキームが見られたこと、と説明されています。つまり足場レンタルは、狙われた典型例として制度側で塞がれた対策です。これを取り上げるのは、勧める文脈ではなく、決算対策商品が制度改正で消えることがあるという実例としてです。今も同じ触れ込みの商品を見かけたら、改正後の要件に合っているかを疑う目安になります。

マイニングマシン — 10万円未満型は即時損金、収益は暗号資産

マイニングマシンにも、決算対策として売られている型があります。1台あたりの取得価額を10万円未満に抑えた構成にして、少額減価償却資産として買った期に全額を損金にする、という考え方です。使用可能期間が1年未満、または取得価額が10万円未満の減価償却資産は、事業に使った期にその全額を損金算入できます(No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示|国税庁)。損金化の速度という点では、即時に近い部類に入ります。

足場レンタルとの違いは収益源にあります。足場が他者へのレンタル収入だったのに対し、マイニングマシンは自社で稼働させて暗号資産を得る形が基本です。他者へ貸し付けるのではなく自ら事業として運用するため、令和4年度改正の貸付け除外とは前提が異なります(実際の適用可否は運用形態次第で、顧問税理士への確認が前提です)。一方で、得られる収益は暗号資産なので価格変動リスクを直接受けます。マシンの電気代や故障、暗号資産の相場によっては、損金は作れても回収額が読みにくいという性質があります。

この商品については、当社が実際に約99万円分を購入し、3年間フルに運用しきりました。損金化のタイミング、実際に得られた暗号資産の額、電気代や手間まで含めた収支を実録記事に残しています。制度の説明だけでは見えない、運用しきったあとの実像はそちらで確認できます(関連記事: 【実録】マイニングマシン節税 — 99万円分を3年運用しきった全記録)。

5つの軸で並べてみる

ここまでの内容を、商品・使う制度・損金化の速度・最低金額帯の目安・収益源・主なリスクの軸で並べると、違いが見やすくなります。金額帯はあくまで一般的な目安で、商品や時期によって変わります。

商品 使う制度 損金化の速度 最低金額帯の目安 収益源 主なリスク
絵画・美術品 減価償却(100万円未満) 遅い(耐用年数8年等で償却) 数十万円〜 売却益・資産保有 100万円以上は償却不可・売却時の値下がり
トランクルーム・コンテナ 中小企業経営強化税制ほか 速い(即時償却を訴求) 数百万円〜 利用者からの賃料 空室・建物認定で耐用年数が延びる論点・途中解約困難
足場レンタル 少額減価償却資産(改正前) ― (令和4年度改正で終了) レンタル収入 制度が既に塞がれている
マイニングマシン(10万円未満型) 少額減価償却資産 速い(即時損金) 数十万円〜(複数台構成) 暗号資産 暗号資産の価格変動・電気代・故障

こうして並べると、同じ「即時償却できます」でも、コンテナは制度の手続きと資産分類に、マイニングは収益の相場に、それぞれ別の不確実性が乗っていることが分かります。速度が速い商品ほど、その速度を成り立たせている前提が崩れるリスクとセットになっている、という見方もできます。

選ぶときに見る4つの視点

商品を横に並べたうえで、当社が判断材料として重視しているのは次の4点です。

1つ目は制度の持続性です。足場レンタルのように、有効だったスキームが改正一発で消えることがあります。今その商品が乗っている税制が、いつまで、どういう条件で使えるのかを確認しておくと、改正リスクを見積もれます。

2つ目は収益の実在性です。損金を作れることと、投じた資金が返ってくることは別問題です。賃料にせよ暗号資産にせよ、その収益が本当に、いくら入るのか。空室や相場でどれだけぶれるのか。損金の大きさだけで判断すると、回収を見落とします。

3つ目は出口です。損金の前倒しで生まれた効果は、資産を売る、収益が益金として戻る、といった出口で最終的に精算されます。途中解約ができるのか、売りたいときに売れるのか、益金が戻る期に何をぶつけるのか。出口が描けない商品は、繰り延べた税金の受け皿がないまま残ります。

4つ目は自社の利益規模との整合です。数百万円の即時償却が生きるのは、それに見合う利益が出ている期だけです。利益の額に対して過大な支出をすれば、決算対策のはずが資金繰りを圧迫します。商品の魅力ではなく、自社の今期の利益に釣り合っているかで見るのが実務的です。

当社の場合

当社が実際に買ったのは、この記事で挙げた中ではマイニングマシンだけです。絵画・トランクルーム・コンテナは購入していません。

マイニングマシンを選んだ理由は、1台10万円未満という価格設計が少額減価償却資産の枠にそのまま乗り、金額規模も当社の利益に釣り合っていたからです。買った結果どうなったかは、収益の実額まで含めて実録記事に残しています。

どれが正解という話ではありません。同じ商品でも、利益規模や出口の描き方が違えば評価は変わります。当社はマイニングを選びましたが、それは当社の条件での結論であって、他社にそのまま当てはまるものではない、という前提で読んでいただければと思います。

まとめ

決算対策商品は「利益が出た期に買って損金を作る」点では同じでも、乗っている税制・損金化の速度・金額帯・収益源・リスクが商品ごとに全く違います。

商品を比較する前提として、そもそも少額の減価償却資産をどう損金化できるのかを押さえておくと、各商品の速度の違いが理解しやすくなります(関連記事: 少額減価償却資産の特例 完全ガイド — 10万円・20万円・30万円→40万円の使い分け)。